TOP推薦図書紹介
推薦図書紹介
図書委員からの推薦図書 2018 Vol.1
Gianluca Passarelli (ed.)『The Presidentialization of Political Parties: Organizations, Institutions and Leaders』Palgrave Macmillan 2015政治の大統領制化(presidentialization)は,21世紀の政治学における一つの主要な研究テーマである。2005年に刊行されたトーマス・ポグントケ(Thomas Poguntke)とポール・ウェブ(Paul Webb)による共編著は,このテーマの最も基本的な文献であるが,ここで紹介するのは,それに続く新しい「大統領制化の国際比較」を行ったものである。 本書は,政党に焦点を向け,政党政治の大統領制化をテーマとしてとり上げ,米国,チリやブラジルなどのラテンアメリカ諸国,オーストラリア,日本,フランス,ポーランド,ウクライナ,英国,ドイツ,イタリアなどのヨーロッパ諸国の事例に注目している。本書の特徴の一つとして,ポグントケとウェブによる著書では取り扱われていない事例に目を向けていることが挙げられる。米国,フランス,英国,ドイツ,イタリアについては,二つの書物を読み比べることによって議論の違いや時代の違いを理解することができるし,他の国々の事例については,新たな知見に触れることができる。 「大統領制化」論は今なお世界的に論じられているテーマであり,本書を通じて,日本のことも含め,現時点での一つの見方を理解することができるとともに,これから先を考えるための一冊としても位置付けることができる。 (岩崎 正洋教授/5F西開架) 今野晴貴著『ブラックバイト:学生が危ない』岩波書店(岩波新書)2016年ブラックバイトとは,大まかにいうと学生の学業に支障がでるようなアルバイトのことで,本書ではこれを「学生を使い潰す」と表現している(ⅱ頁)。 本書はブラックバイトの特徴を次の三つに整理分類している(59頁)。 ① バイトなのに責任が重くなり,正社員のような生活になる「学生の戦力化」。 ② 学生の無知や幼さにつけ込み賃金など法律が守られていない「安く,従順な労働力」。 ③ 脅されたり,責任感等から「一度入ると,辞められない」バイト。 本学でもアルバイトをする学生は多いだろう。自分自身の小遣い稼ぎのためにアルバイトをする学生もいれば,一方では自らの生活費や学費を稼ぐために,必要に迫られて働く学生も少なくないだろう。ただし働く背景・意義が異なっていてもバイト先が「ブラック」だと等しく深刻な、場合によっては学生の人生を左右する問題となる。 本書は色々な実例を紹介しているので,学生のみなさんが,ブラックバイトの被害に遭わないよう予備知識を得るためにも一読の価値はある。 (大山 盛義教授/5F東開架) 沼野輝彦編『政治とマス・コミュニケーションに関する諸問題 : 黒川貢三郎教授古稀記念論文集』日本大学法学会2009年「論文を書く」スキルを身につけるうえで,最も大切なことは「論文を読む」ことだ。あなたが関心を抱いている学問領域の学会誌を読むのが最良だが,法学部内にも先生方の研究成果をおさめた紀要が随所に置かれているので,ぜひ手に取ってもらいたい。はじめは内容が難しくて,理解できなくても構わない。論文というものが,どのような構成で書かれているかを把握していくだけで力になる。 こうした意味において,今回紹介するような論文集は学生にとって有用である。所定の領域に関する様々なテーマの論文が掲載されているので,あなたにとって興味がそそれられる論文が1つはあるはずだ。本書の場合,掲載されている論稿のほとんどが法学部の先生方によるものなので,普段授業を受けている先生がどういった研究をしているのかを知ることもできる。「どんな論文を読んでみたら良いか分からない」という学生がいたら,まず本書を繙くと良いだろう。 なお,本書は2009年に黒川貢三郎名誉教授の古稀を記念して編まれた論文集である。黒川先生は昨年に喜寿を迎えられ,本年1月27日には,大学院の講師退任を記念した「最終講義」が予定されている(学部生も聴講可能)。 (石川 徳幸准教授/4F東開架) 樋口文和著『わが心の京都府警』新潮社2017年テレビの世界では,「刑事もの」が全盛である。面白いが,法学部の学生としては,一歩距離を置いて観てもらいたい部分もある。所詮「ドラマ」なのである。それに対して,本書は「リアルな刑事の世界」である。しかも,テレビの世界より「ドキドキ」する面がある。 個人的にも親交のあるのある京都の警察官が,42年間勤め上げて,去年定年退官し,事実に基づく回顧録を刊行した。最大の推薦理由は,「文章力」である。学生の皆さんを飽きさせない魅力がある。特に本書の中心である第5章は,事件の展開が面白く,ついつい読み進んでしまう。しかも,すべて本当にあったことなのである。 刑法・刑事訴訟法の学習にとって,非常に有意義な参考文献である。ただ,それ以上に,就職に迷う学生の方にも,非常に有意義な本だと思う。日大は,最も多くの警察官を輩出している大学と聞いている。全部を読み終えた上で,最後に「自分に正直であってよかったといえる警察官人生」という筆者の言葉を噛み締めて欲しい。まさに本音なのである。 (前田 雅英教授/新着図書コーナー) このページのトップへ戻る
|